この存在を知る
レーシーとは?
レーシーはロシアの森の異類です。この記事で読むRalstonのThe Léshyでは、白髪なのに若く見える男が、丸太に座って樹皮の靴を編み、月に声をかけています。人を森へ連れ去る話ですが、角や樹皮の身体を持つ巨人としては描かれていません。
- この記事の範囲
- Ralston掲載のThe Léshyという一つの話
- 名前の手掛かり
- 訳者の注はlyes(森)に結び付ける
- 出会った姿
- 若く見える白髪の男。丸太に座り、樹皮の靴を編む
- 小屋の場所
- 森の丘の裂け目
- 物語の結末
- 娘は村へ戻るが、森の小屋は再発見されない
森の名を持つ、ひとりの男
Ralstonの注264はLéshyまたはLyeshyという名を、森を意味するlyesに結び付けます。この記事の「レーシー」はその存在の日本語表記です。語の説明だけでは姿や性格までは決まらないため、まず掲載された一つの話に入ってみましょう。
参照した英訳の注は、元の話をAfanasiefの第VII部第33話と記します。今回はRalstonの本文と注を確認したもので、Afanasiefのロシア語版を直接校合した記事ではありません。英語の綴り、元の資料の参照番号、今回読める範囲を分けて示します。
犬が吠えた先で、靴を編んでいる
図版を大きく見る ↗
ある司祭の娘が森へ入り、そのまま姿を消します。三年後、村の猟師が犬を連れて森を歩いていると、犬が吠え、背の毛を逆立てます。道に横たわる丸太の上には、一人の男が座って樹皮の靴を編んでいました。
男は月を見上げて声をかけます。猟師が不審に思ったのは、若い顔に白髪があることでした。猟師の考えを見透かしたように、男は自分を悪魔の祖父だと答えます。その言葉を聞き、猟師は相手が普通の農民ではなくレーシーだと気付きます。
この場面の異様さは、日常の手仕事をする男の姿と、年齢の食い違い、思考に応じる返答の重なりにあります。主画像もこの出会いを選び、資料に書かれていない角や樹皮の皮膚は加えていません。
丘の裂け目にある小屋
猟師はレーシーを撃ちます。レーシーは茂みへ入り、犬と猟師が後を追うと、丘の裂け目に小屋が見つかります。中には倒れたレーシーと、泣いている娘がいました。娘は、自分の父母や来た場所を答えられません。
娘がすぐ喜んで救いを求める場面にはなっていません。彼女は、これから誰が食べ物や飲み物をくれるのかと嘆きます。連れ去られた人が森の暮らしに取り込まれ、村での生活を思い出せなくなった状態として読める、話の重要な部分です。後半の説明は本文に対する編集上の読み取りです。
木に印を付けても、小屋へは戻れない
図版を大きく見る ↗
猟師は娘を連れて村へ向かい、途中の木に印を刻みます。司祭と妻は帰ってきた娘だと分かりますが、娘の側は初め、二人の言葉を理解しません。少しずつ正気を取り戻し、やがて猟師との結婚が語られます。
それから人々は、娘が暮らした小屋を探しに森へ入ります。しかし、長く探しても見つかりませんでした。木への目印という具体的な行動と、同じ場所に戻れない結末が隣り合い、村と森の境目を物語として残しています。
森の精を、一つの標準図にしない
Ralstonはこの話の前で、王女の奪還をめぐる物語が、猟師と司祭の娘の話へ形を変えたと説明します。これは訳者・編者による比較の見方です。今回の記事はその見方を紹介しつつ、掲載本文の出来事を、伝承の実際の起源を証明する材料へ置き換えません。
この一話では森からの連れ去りと帰還が中心です。全レーシーの善悪や身体の大きさを、ここから一律に決めることはできません。隣のバーバ・ヤーガでは、同じ森でも家の主と来訪者の関係を読み、場面の違いを比べられます。
伝承と想像の境界
資料で分かること、
分からないこと。
- 参照した一つの英訳の話に範囲を限り、スラヴ全域の森の精の伝承を網羅しません。
- 注に挙がるAfanasiefの原文は今回直接校合していません。ロシア語版の異同や細かな語感は未検証です。
- 一般的な身体の大きさ、角、樹皮の皮膚、全伝承共通の性格をこの話からは確定しません。
図版の制作について
この画像の見方
参照した話の姿と道具を、本文と照らして読む
RalstonのThe Léshyの出会いを参考にした再構成。若く見える白髪の男、丸太、樹皮の靴、月を反映しています。
制作上の想像:顔立ち、衣服と履いている靴、樹種、靴の編み方の細部、月の位置と森の配置。民族衣装・実際の採集場所の復元ではない。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。歴史的な図版・民族衣装の実測復元・実物の写真ではない。WebP化して公開。
画像を大きく見る ↗日常の手仕事が異様な出会いを支えることを細部から読む
RalstonのThe Léshyの、丸太で樹皮の靴を編む場面を参考にした部分図。靴の形・編み方・樹種・光は想像です。男と月は画面外。民族資料の実測復元ではありません。
制作上の想像:靴の形、編み方、樹皮の色、丸太と森の配置、光。実物の靴や特定地域の技法の復元ではない。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。歴史的な図版や実物写真ではない。WebP化して公開。
画像を大きく見る ↗帰り道の目印と小屋を再発見できない結末を本文と照合する
村へ戻る猟師が木に印を刻む記述を参考にした再構成。印の形・樹種・道・光は想像です。小屋の位置を示す地図や、再発見できなかった原因を説明する図ではありません。
制作上の想像:印の形と位置、樹種、地形、道と照明。採集場所の復元や実際の道案内ではない。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。歴史的な図版や実物写真ではない。WebP化して公開。
画像を大きく見る ↗物語を確かめる
参考資料・出典
参照した版・翻訳・箇所を示します。本文は以下の資料を手がかりにした独自の日本語解説です。
- 01
Ralston:The Léshy
W. R. S. Ralston, Russian Fairy Tales: A Choice Collection of Muscovite Folk-lore ↗Project Gutenberg #22373掲載、New York: Hurst & Co.の英語版。標題紙には刊年が見当たらず、Gutenberg書誌のOriginal publicationは1872とする。掲載版・初版・伝承成立時期を同一視しない。
- 参照箇所
- Chapter III, Miscellaneous Impersonations, The Léshy, pp.213–214;直前の説明;注264–266。注264はAfanasief, vii. No.33と記す。 序文注7は、ローマ数字を部(part)、No.を話番号として説明する。
- 確認日
- 2026-10-04
訂正と更新
Afanasiefの参照単位「第VII巻」を、Ralston序文注7の説明に合わせて「第VII部」へ訂正しました。出典欄の章副題も掲載版のMiscellaneous Impersonationsへ修正しました。
この記事の誤りを報告する ↗

