この存在を知る
アポピスとは?
アポピスは、古代エジプトで太陽神ラー(レ)の航行を妨げる、蛇の姿をした敵です。アペプとも呼ばれます。太陽の旅、猫が蛇を退ける図、神殿で日々行う儀礼では表現の目的が違います。一度の怪物退治の物語にまとめず、何を守るために退けるのかを資料ごとに読みます。
- 対象地域
- 古代エジプト。太陽の航行と葬送・神殿の文書
- 姿の入口
- 大蛇。図版の鱗・色・大きさは想像
- 対抗するもの
- 太陽神ラー(レ)と、神々・儀礼の言葉
- 参照する写本
- アニの死者の書、ブレムナー=リンド・パピルス
- 名称の範囲
- 神話の蛇。天体などの同名対象は扱わない
太陽の舟を止めようとする蛇
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Global Egyptian Museumは、アポピスを太陽の光を脅かす蛇と説明し、舟の航行を止めようとして水を飲み干す話を示します。同解説では、飲んだ水を魔術によって吐き戻させられます。太陽の旅が続くことと、その道が塞がれることの対立が、姿を理解する入口です。
同解説では神々だけでなく人も言葉によって太陽の旅を助けます。図版はその「舟と道を塞ぐ蛇」という関係を選びました。舟と蛇の大きさは演出で、全長や重さを古代資料から算出した図ではありません。
猫が蛇を退ける、アニの挿絵
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BudgeのPlate Xの図の説明は、ヘリオポリスの木のそばで猫が蛇Apepiを斬る場面を、太陽と敵の関係として読みます。第17章の掲載訳も雄猫をラー自身と解く一方、別の解答を併記します。図の説明と、本文が示す解釈の選択肢を分ける必要があります。
ここから「猫という種類の動物すべてがアポピスの敵」とは決められません。猫はこの図と説明の中で神を表す姿です。今回の主図は暴力の瞬間を描かず、舟の航行をめぐる対立を示し、本文の猫の図版も、斬る場面を行動前の対面に置き換えた想像です。原図の動作をそのまま再現したものではありません。
神殿で日々行う、退けるための言葉
TLAのブレムナー=リンド・パピルスの掲載ドイツ語訳では、第22欄の標題が、アポピスをレの敵とし、カルナクのアメン=レ神殿で日々行う文書と記します。冒頭にはレと王のための言葉、レの強さや勝利を告げる言葉が続きます。
物語の登場者を説明するだけでなく、声に出して行うための文書である点が大切です。読み手は「昔一度倒した敵」という筋だけでなく、反復して秩序を保とうとする儀礼の用途を見ることができます。ここでは原文の作法を実演する手順にはしません。
同じ名でも、図・本文・儀礼は別の資料
アニの挿絵解説と、神殿で行う文書の標題は、どちらもアポピスに関わります。しかし、図で神の勝利を示すことと、儀礼の言葉を毎日行うことでは、資料がする仕事が違います。出典の名前だけでなく、どの欄・どの説明を参照したかを確かめます。
第17章の掲載訳には問いに複数の答えが続く箇所があります。訳者による異本からの補足も含まれるため、すべてを一つの連続した冒険に並べ直すことはしません。
表は横にスクロールできます。
| 資料 | 確認した場面・用途 | 読み広げないこと |
|---|---|---|
| 博物館の用語解説 | 太陽の舟を妨げる蛇 | 一冊の古代本文の直訳ではない |
| アニの図と掲載英訳 | 猫と蛇、複数の解答 | 図の解釈と本文・補足を区別 |
| ブレムナー=リンド第22欄 | 神殿で日々行う文書の標題 | 全文とすべての儀礼は未確認 |
写本の年代を、神の誕生年にしない
TLAはブレムナー=リンド・パピルスを、テーベに関わる大英博物館10188の巻物、紀元前4世紀最後の四半世紀の資料とします。その中にはイシスとネフティスの歌なども収められ、アポピスを退ける文書は巻物の一部です。
これは確認した資料の年代で、アポピスの伝承がその時に初めて生まれたという意味ではありません。古代の一資料の年代、近代の翻訳の刊行年、現在の研究コーパスの版を分けて記録しています。
伝承と想像の境界
資料で分かること、
分からないこと。
- TLAの文書メタデータと第22欄1–3行の冒頭10文、アニの掲載英訳と挿絵解説を確認した範囲です。原写本の実見・独自のヒエログリフ訳・Faulkner刊本全体の校合は未実施です。
- Budgeは1895年の旧訳で、現在の研究の標準訳とはしません。神々の起源、エジプト全時代の異伝、各神殿の儀礼全体は確定しません。
- 反復する太陽の旅と儀礼の力は古代の宗教的説明です。画像は想像上の関係図で、日食などの科学的な仕組みや実在の蛇のサイズを表しません。
図版の制作について
この画像の見方
太陽の旅と、それを妨げる蛇の関係を見せる
太陽の舟を妨げる蛇という役割を参考にした再構成。蛇の鱗・色・曲がり方、舟の細部・背景・縮尺は想像で、特定写本の図や実在の水路を復元していません。
制作上の想像:蛇の鱗と配色、一頭の身体の曲線、舟の設計と小さな日輪、岩の水路、水平線、距離と縮尺。実在の遺跡・儀礼・天文学の再現ではない。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。古代図版・館の写真は複製しない。
根拠:Global Egyptian Museum:アポピス
画像を大きく見る ↗水が戻り、舟の航行が可能になる関係を見せる
Global Egyptian Museumの、水を吐き戻させられる展開を参考にした再構成。舟・日輪・蛇の鱗・色・地形・縮尺は想像で、現実の川や魔術の作法を復元しません。
制作上の想像:蛇の身体と鱗、吐き戻す水の流れ、舟と日輪の設計、岩や砂、日の出の光、すべての縮尺。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。古代図版・館の写真は複製しない。
根拠:Global Egyptian Museum:アポピス
画像を大きく見る ↗ラーを表す猫と蛇の図像へ、本文から目を向ける
猫と蛇の挿絵を手がかりにした再構成。原図で斬る場面を、ここでは行動前の対面として想像しました。毛・木・蛇・刃物・背景・縮尺は想像で、古代図版の複製ではありません。
制作上の想像:斬る直前という時間設定、猫と蛇の姿勢・大きさ、毛・鱗・木の種類、足元の刃物、河川と日の出の背景。原図の動作を避けた独自の想像。
制作・利用:本サイト用に組み込みimagegenで制作した独自の再構成。古代図版・館の写真は複製しない。
根拠:Budge:猫と蛇の挿絵 Global Egyptian Museum:アポピス
画像を大きく見る ↗物語を確かめる
参考資料・出典
参照した版・翻訳・箇所を示します。本文は以下の資料を手がかりにした独自の日本語解説です。
- 01
Global Egyptian Museum:アポピス
The Global Egyptian Museum, Apophis ↗博物館共同データベースの英語用語解説。個別の古代本文の全文翻訳ではない。
- 参照箇所
- 冒頭の蛇と太陽神レ、太陽の舟と水、猫の図像、神々と人間による対抗、日々の儀礼。
- 確認日
- 2026-10-05
- 02
Budge:猫と蛇の挿絵
E. A. Wallis Budge, The Book of the Dead: The Papyrus of Ani, Plates VII–X ↗1895年刊の掲載英訳・図の解説。Apepi、Apepの表記を含む。古代本文・訳者の説明・補足した異本を区別する。
- 参照箇所
- p. 280、Plate XのVignette 1。p. 287の猫とその解釈、p. 288の複数の解答。
- 確認日
- 2026-10-03
- 03
TLA:アポピスを退ける書
Frank Feder et al., Thesaurus Linguae Aegyptiae, Buch zur Niederwerfung des Apophis ↗Text ID A2PTGDCYB5E4XK6OORW6V4QHOE。Corpus edition 20、Web app 2.5.2(2026-08-20)。掲載転写とドイツ語訳の冒頭10文を直接確認。Faulknerの刊本全体は未読。
- 参照箇所
- 第22欄1–3行の冒頭。アポピスをレの敵とし、カルナクのアメン=レ神殿で日々行うとする標題、レと王に関する語句。
- 確認日
- 2026-10-05
- 04
TLA:ブレムナー=リンド写本
Frank Feder et al., Thesaurus Linguae Aegyptiae, Papyrus Bremner Rhind (pBM 10188) ↗Object ID JCMC4JU24RGZDE23YLAB3O3YNY。大英博物館10188、テーベ、紀元前4世紀最後の四半世紀という資料メタデータを確認。
- 参照箇所
- Materials、Finding place、Current location、Dating、Related objects and texts。複数文書を収める巻物と、その中のアポピス文書。
- 確認日
- 2026-10-05
訂正と更新
Global Egyptian Museumの解説に沿って水を吐き戻させられる展開を補足し、TLAの出典リンクを第22欄の標題へ直接移動できるよう改善。
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